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2020年代の売り方

by 唐草 [2021/02/13]



 夕方の5時ぐらいにリビングでお茶お飲んでいたら妙な音が聞こえるような気がした。どこか遠くから音楽が聞こえているような感じ。でも、あまりにも音が小さいので空耳のように思えた。テレビがカフェのシーンを流していたので店内BGMにも思えた。でも番組の雰囲気に似つかわしくない音だ。
 シーンが変わっても妙な音は途切れなかった。どうやらテレビの音ではないようだ。家の外から聞こえてきている音に違いない。
 さらに耳を澄ませて音に集中してみた。こころなしか先程より音が大きくなったような気もする。誰かが大きな声で歌っているように聞こえる。声の高さからして男声と思って間違いないだろう。そう言えば、我が家の裏に庭でときどきホームパーティーを開催していた家がある。コロナによる自粛生活になって以来、パーティーは開かれていない。今聞こえているのは男が酔った勢いで大声を張り上げているような音で、パーティーが開催されていたときによく聞いた音に似ている。久々にパーティーを開いているのだろうか?
 だが、素人が歌っているにしては音量が安定している。どんちゃん騒ぎをしていたとしても数分間に渡って腹の底からしっかり発声したような声を響かせ続けるのは難しい。パーティー参加者にテノール歌手でもいるのだろうか?だとしたらいい近所迷惑だ。
 二重サッシに守られたリビングからでは音の正体は分からない。このまま無視しても一向にかまわない程度の音だけれども、なんだか正体を突き止めたい気分になってしまった。リビングを出て階段の窓を開けたらクリアな音が飛び込んできた。
 音の正体は冬の風物詩、石焼き芋のメロディーだった。
 ゆっくり走る軽ワゴンからおなじみのメロディーが大音量で流れていた。風物詩とは言え、なんだか久々に聞いたような気がする。
 メロディーを流しながら走るという昭和テイストな売り方は今でも通用するのだろうか?少なくとも我が家の二重サッシはしっかりと役目を果たしてメロディー遮音してくれていた。住宅建材の進歩に合わせて焼き芋の売り方も進化させないとダメなんじゃないだろうか?
 幸いぼくの心配は杞憂だったようだ。車の周りには芋を求めて人だかりができていた。