カレンダー

2021/03
 
   
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

蛸猫と

by 唐草 [2022/06/27]



 ぼくは長らくフリーランスとしてひとりでプログラムの開発を請け負ってきた。このスタイルには、メリットもあればデメリットもある。自由と責任は比例するというのが率直な意見で、同じやり方を誰かに勧められるかと言えばNoだ。
 それでもぼくはこのスタイルが好き。フットワーク軽くさまざまな人と仕事ができたし、エンターテイメントから教育まで幅広く携われた。
 その一方でいくつかの不安もある。ぼくはプログラムもネットワークもちゃんと勉強したことはない。プログラムはC言語の「**とはなんぞや?」という問いに2時間悩んだぐらい。ネットワークは「BSDのマニュアルを読んでおけ」と渡されたのが英語版だったので、以来ずっと読んだふりをしているだけ。
 体系だったアカデミックな教育を受けていないので、自分のやり方がどこまで通用するのかが全然分かっていない。いつも手探りで、ウネウネした通路をすり抜けていくような危うさがある。
 そしてもう1つの不安は、共同作業を苦手としていること。プログラムの書き方も、アルゴリズムの設計もすべて我流。データ管理だって自己流だ。だから誰かと組んで一緒にプログラムを書ける気がしない。
 ここで言う誰かとは、必ずしも他人のことではない。過去の自分も含んでいるし、その苦い経験から未来の自分すら想定している。
 「プログラマあるある」の1つに「数ヶ月前の自分のコードが、どうして動くのか分からない」というのがある。それでもプロジェクトの仕様書やチームの設計方針があれば時間をかければ読み解くことはできるだろう。
 だが、ぼくには何の仕様書も指針もない。すべてが流れる川のように変化して消え去っていく。様々なコンピュータで作業して無数の派生バージョンを生み、どれが最新版なのか分からなくなることも多い。そんな無秩序な状況に陥って時間を無駄にしたことは枚挙に暇がない。
 だから、次の仕事からgithubでレポジトリを作ってプロジェクトを管理しようと毎回のように考える。でも、その考え方はダイエットを始める明日が永遠に来ないのと同じように無限に先送りされている。