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暗いお風呂

by 唐草 [2021/04/05]



 先日、明かりをつけずにあえて暗いお風呂に入るのがSNSを中心に広がりを見せているという記事をネットで読んだ。ハッシュタグにしたらバズりそうな名前がつけられていたような気がしたが、SNSで目立つことだけを考えたものに拒否反応を示すぼくはその名前を覚えようともしなかった。
 流行り始めているのは、湯けむりの中に浮かぶキャンドルライトの写真がいいねの対象になるからだけではないようだ。健康科学的な見地から暗い入浴を分析してみるとメリットがあると記事には書かれていた。暗い中でお湯に使っていると副交感神経の緊張をほぐすらしい。また、目への刺激が減るので眼精疲労の解消にもつながるそうだ。明かりに溢れた現代だからこそ、暗い場所でゆっくりすることに価値があるらしい。
 この分析を読んで、ぼくは膝を打った。
 何を隠そうぼくは、SNSで流行るよりもずっと前の10年ぐらい前からずっと明かりをつけないでお風呂に入っていた。磨りガラス越しに脱衣所から入ってくる電球色の弱くも温かみのある明かりでお風呂につかっていた。この習慣が長く続いていたのは、仕事で酷使した目の回復を無意識に感じ取っていたからなのかもしれない。
 ただ、ぼくの暗い入浴が始まったのは、ちょっと情けない理由がきっかけ。
 眼精疲労を回復させようなんて狙いはまったくなかった。ましてや暗いお風呂のムードを楽しむなんてつもりもない。もっと切実で悲しい理由がすべての始まり。
 10年ぐらい前のある日、急にお風呂の電球が切れた。当時はまだ白色電球だったので予告なく電気が切れることも珍しくなかった。翌日、電球を取り替えようと防水用の電球カバーを外そうとした。だが、回しても引っ張ってもカバーは微動だにしなかった。それどころか、風呂の天井がベコベコ動く始末。
 このまま力任せにカバーを外したら絶対に風呂の天井が割れる。天井に穴の空いた風呂と明かりのつかない風呂を天秤にかけた結果、そぼくは電球の交換を諦めた。以来10年、我が家の入浴は明かりをつけていない。流行の圧倒的先取り、きっかけはこんな些細なことだった。