カレンダー

2022/03
  
  
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

セルフレジ

by 唐草 [2022/04/02]



 昨日、初めてコンビニのセルフレジを使った。拍子抜けするほどあっさり会計が終わった。あまりにもスムーズに終わって店を後にしたので、まるで黙って商品を持ち出したような居心地の悪ささえ感じてしまった。これは初体験のシステムへの無理解がもたらした居心地の悪さでしかない。このスムーズさを知ってしまったら、もう店員のいるレジに並ぶ気は起きない。きっと次もセルフレジを使うだろう。
 数年前からコンビニでの決済はキャッシュレス化していたが、その次のステージには踏み出せないでいた。セルフレジがあっても、なお有人レジの列に並んでいた。なぜ、ぼくはシステムの進歩を受け入れようとしなかったか?
 ぼくは慎重な性格と言われる。これは結果だけを見た表面的な評価にすぎない。本当は慎重にことを進めるのなんてまどろっこしくて好きじゃない。効率化と時短が大好きなせっかち人間だ。それなのに慎重だと言われるのには訳がある。
 失敗を見られるのが絶対に嫌なのだ。せっかちである以上に見栄っ張りなのだ。
 だから内心では慎重なやり方にイライラしながらも、絶対に失敗しない方法を受け入れている。リスクを冒して勝利を掴むより、ちょっとでも読めない要素がある試合には手を出さない。勝ち星の数よりも無敗であることを誇っている。それは戦いに挑まない臆病者の自慢でしかない。
 こんなぼくがセルフレジを見ると何を考えるか想像できるだろうか?
 通勤の朝だったら「不慣れな操作で電車を逃すとまずいので使わない」、買うものがたくさんあるときは「台から商品を落としてしまうかもしれない」と考える。セルフレジが混んでいる時は「有人レジの方が早そう」と言い、逆に空いている時は「前の客の操作を見て手順を確認できないからやめる」と言う。
 ありとあらゆることをセルフレジを使わない理由にしようと考えていた。
 昨日は、電車は10分待ち、買うのはペットボトル1本、有人レジに列ができていて、セルフに1人だけ先客がいた。これまでのすべての言い訳が封じられていた。逃げの理由を挙げられない奇跡の瞬間が、ぼくの背中を少し乱暴に押した。