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磁石を飲む

by 唐草 [2022/04/16]



 先日ニュースサイトで「マグネット式おもちゃに年齢規制が導入」という記事を読んだ。対象となるおもちゃは、ぼくも持っている。BB弾より小さな球状マグネットで様々な形を作れるもの。子供向けのおもちゃというより自由度の高いインテリアという感じ。
 いろいろな形を作れるのも面白いが、それ以上に磁石を感じながら小さな粒をくっつけたり離したりするのが気持ちいい。いつまでもいじっていたくなる。良い年した大人だって楽しいんだから、子供だったらさらに夢中になるに違いない。
 ぼくはまったく危険性を感じていなかったが、思わぬところにリスクがあった。
 間違って数粒誤飲してしまうと腸管を隔てて磁石がくっついてしまうという恐ろしいリスクがあるそうだ。それは腸を内側からクリップで留めるようなもの。考えただけで痛い。なにより切開しないと除去できない。
 しかし、いくら子供とはいえ磁石なんて飲み込むか?と思ったとしたら、それは子供のことを何も分かっていない証拠。
 4歳のぼくは飲んだ。
 飲んだのは10円玉ぐらいの大きさの丸くて黒い磁石。冷蔵庫に紙を留めるカラーマグネットに入っているようなもの。
 飲んだきっかけもよく覚えている。その数日前にゴムの吸盤はちょっと濡らすとよく付くという話を父親から聞いていた。試しにおもちゃの吸盤を舐めて濡らしたら良くくっついた。ということは、磁石も舐めたら良くくっつくのでは?と仮説を立てて実験した。
 円盤状の磁石を舐めようとしたとき、ツルッと手が滑って、ゴクッとひと飲み。磁石の喉越しは滑らかだったのだろうか?そこは覚えていない。苦しくもなんともなかった。ぼくは大事と思わず平然と母親に告げたが、それ以降は母親も医者もテンヤワンヤだったそうだ。
 吸盤がくっつくのはファンデルワールス力で磁石がくっつくのは分子間の弱い電磁気力だと説明してくれれば、こんなことは起きなかったはずだ。
 ぼくが飲み込んだのは1個だったので、とりあえず人間の摂理に任せて出てくるのを待った。毎日、母親がぼくのうんこを分解していたのをよく覚えている。
 ほんと、すみません。
 ちなみに磁石は無事に出た。尻から。