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トイレのadmin

by 唐草 [2022/05/11]



 職場は12階建てのビル。4階までは階ごとに異なる構造になっているが、5階から上はコピペしたかのように同じ構造が重なっている。部屋数も同じだし、トイレの位置も同じ。誤った階でエレベーターを降りてしまっても、すぐにはミスに気づけない。
 そんな環境なのに、ぼくのいるフロアだけ小さな問題が起きている。この春から温便座がオフになって冷たいのだ。たかが便座の問題と侮ってはいけない。温かいと信じて座った便座が冷たかったときのショックは、体がビクッとして出そうだったものが引っ込むほど大きい。
 便座が冷たくても用は足せるとかいう我慢を美徳とする昭和な考えを押し付けないでほしい。今は、快適さを積み重ねて生産性を高める時代なのだ。尻の快適さなくて成長も発展もない。
 他の階のトイレへ足を伸ばしてみたところ、上の階も下の階も暖かかった。便座が冷たいのは、よりによってぼくのいる階だけ。
 家庭用温便座ならスイッチひとつで機能をON/OFFできる。職場の業務用モデルだとそうもいかない。勝手に設定を変えられないようになっている。だから、過激な環境保護論者がいて節電のために便座を冷たくしているということはない。管理者が操作を誤ってしまった可能性が濃厚だ。
 温便座の操作パネルに目を凝らすと小さな文字で温度変更の手順が書かれている。どうやら、特定の操作で便座を管理モードに切り替える必要があるらしい。その手順は管理マニュアルに記載されているそうだ。
 ビックリな事実の発覚だ。
 業務用便座には管理者権限が設定されているなんて夢にも思わなかった。これではまるでサーバと同じじゃないか。便座の冷たいトイレには神様はいないようだけれど、adminとかrootといった管理者はいるそうだ。
 いったいどんな操作をすれば管理者権限をゲットできるのだろう?きっと特定のボタンを長押しだと思うけれど、ボタンの数が多く組み合わせはかなりある。ちょっとやそっとではadminをゲットできそうにない。
 まさか、トイレで便座をハックする日が来るなんて。人生何が起きるか分からない。