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黒い思い出の箱

by 唐草 [2022/05/01]



 廃PC処理会社から「GWの片付けもお任せください!」というメールが届いた。まるでぼくの連休を見透かしたようだ。
 という訳で、今日は古いPCを破棄すべく片付けをしていた。物を大切に扱うのは良いこととされている。でも、ぼくのように道具に愛情を注いでしまう人は、「大切に扱う」の度を超えている。そうなると美談の背後に隠された影が色濃くなる。大切に扱いすぎて不要な物を手放せなくなってしまうのだ。
 その結果、ぼくの部屋はPCの墓場と化し、何台ものPCが積み重ねられている。中には15年以上前のものもある。黒い筐体が多いので、野積みされた墓石のように見える。そこに新鮮な空気を届けるのが、今年の連休の目標。
 破棄するPCの目星は付けてある。マルチコア化の過渡期に生まれたPentium Dを積んだPC(e-machines J4438)。発熱が大きく電気効率が悪かったため評判の悪い。
 世間の評判とは裏腹に、ぼくはこのPCを活用していた。初めて就職した会社で買ってもらったPCで、その業務を軸に起業したのでPCをそのまま譲り受けた。人生の転機に使っていたPCなので何かと思い出深い。
 しかし、使わなくなって7,8年経過している。これは不要というなによりの証拠。ハードもソフトも古くて使い道はない。それに黒い筐体は、思い出を詰めるものではない。情に流されPCを記念に残していたら、ぼくの部屋は黒い箱に埋め尽くされ、終いには床が抜けるだろう。
 そんな末路は望んでいない。優先するべきは、思い出ではなく、これからの快適さ。そう信じて処分を決断した。
 でも、処分の前に一度だけ起動してみよう。片付けのときに思ってはならない悪魔の囁きだ。だが、その囁きはかえってぼくに冷静さをもたらした。
 思い出のPCは起動しなかった。どうやらマザーボードが壊れているようだった。
 こうして、思い出のマシンを手放す覚悟が固まった。
 なお、使えるパーツを回収して再利用した結果、外付けファン搭載小型PCと電源外装PCサーバというキメラなPCが誕生した。思い出は、最後に怪物を生み出したようだ。