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空似の愛着

by 唐草 [2022/06/26]



 5月からぼくの仕事机にハンドメイドのフィギュアが置かれている。オンラインゲームの自キャラを作ってくれるサークルの作品だ。作ってくれるのはシリコン型で複製した無塗装の素体だけ。着彩はオーナー自身が行う必要がある。古き良きガレージキットの精神を引き継いだフィギュアである。
 ただ、机の上にちょこんと腰掛けているキャラは、ぼくのアバターではない。顔の造形はかなり似ているけれど髪色も違う他人のキャラ。
 なぜ、自キャラではなく他人のキャラを飾っているのか?
 「オーナーに返す機会がない」というのが、その理由だ。
 GWに知人の壊れたフィギュアを修理・再塗装した。久しぶりの塗装が楽しかったので、ここの記事にも書いてある。そのフィギュアを未だに返せずにいる。急いで返さないといけない理由はない。高さ10cmぐらいの小さなフィギュアなので机に置いていても邪魔にならない。これがいちばん重要な点だが、持ち主からの返却の催促もない。
 だから「次に会ったときに返せばいいか」と思って放置し続けている。コロナ前は3ヶ月に1回ぐらいのペースで会っていた。ところが、コロナのせいでGWに会ったのは2年ぶりとなってしまった。でも、この先はそんなに間が開くことは無いだろう。なんだか夏頃に会う機会がありそうな気がする。焦る必要もない。
 机にフィギュアを飾るなんて、ぼくの趣味じゃない。机に置くのはペンギンだけというのがぼくのポリシーだ。だから、さっさと返したいと思っていた。
 でも、自キャラに似たフィギュアを2ヶ月間も置いていたら意識が変わってきた。そのゲームではもう遊んでいないけれど、なんだか愛着が湧いてきた。今やモニターの脇にそのキャラがちょっと意地悪そうな表情で座っているのが日常の光景。
 フィギュアがなくなったら喪失感とまではいかなくとも、何かが欠けたような一抹の寂しさを感じることだろう。
 このままフィギュアを置いていたらドンドン愛着が湧いてきてしまう。しまいには返したくなくなっても不思議はない。そうなる前に急いで返却したほうがいいのかもしれない。