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さよなら、20年前の自分

by 唐草 [2022/08/20]



 掃除をしていたらベッドの下から600枚ぐらい挟める分厚いファイルが出てきた。挟まれていたのは、5年以上前の授業の提出物だった。保存期間も過ぎたし、振り返る必要のない紙だ。数年前に学生たちが頑張って作ったレポートと言えど、今となってはただのゴミ。
 そんな紙束を見つけたことをきっかけに自室の整理が始まった。部屋には数年間一度も触れていない紙束がいくつもある。記念に残しているもの、裏紙として再利用しようとしたもの、捨てどきを逃して放置されているものなど様々だ。その様子は、TVで見た昭和のオフィスのよう。
 この機に紙を一掃だ。軽く確認してはテキパキと紙をゴミ袋へ放り込んでいく。しっかり目を通してしまうと思い出に浸って手が止まってしまう。こういう処分は「今、必要か否か」というシンプルな基準で進めないといつまで経っても終わらない。
 まるで他人のゴミを整理するように無感情に紙の仕分けをしていたが、ある資料を目にした時はさすがに手が止まってしまった。
 それは、遥か昔に公開したゲーム『ギコネコの大冒険2』のダンジョン生成や敵の挙動制御のアルゴリズムをメモした紙と初代『ギコチャット』のプロトコル一覧だった。
 約20年前の資料である。よく残っていたものだ。無造作にクリアファイルに挟んであっただけだが、記念に取っておいたのだろう。
 A4の紙に黒と赤のボールペンでフローチャートや模式図、変数名がギッチリと書き込まれていた。黒インクは少し変色している。
 今見ると実に拙い内容だ。こんな単純なアルゴリズムはフローチャートにするまでもない。アイテム管理に2次元配列を使っているのは無駄の極み。未実装のまま終わったプロトコルも多数あった。
 それでも、当時のぼくがベストを尽くした痕跡である。本人の自覚は乏しいが、大学生の頃とは比べ物にならないほどレベルアップしているようだ。
 ここのログを読むと4年前には、このゲーム制作メモを捨てられなかったようだ。でも、その過去にまだ縋り続けるつもりはない。今のぼくにはただのゴミ。こういう冷静で冷徹な判断を下せるようになったのも成長の証。