カレンダー

2023/02
   
    
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

まだ食べたくない

by 唐草 [2023/03/08]



 先週からコオロギ食の話題が炎上的な意味で熱い。「虫なんか食いたくねぇ」というのが大半のようだ。
 炎上を追ってみると事実誤認な感じで話題が広まった形跡があるようにも思える。もしかしたら炎上を狙った人がいるのかもしれない。だが、着火原因がどうであれ燃え広がったことは紛れもない事実。火が広がる土壌があったことは確かだ。
 ぼくも「コオロギを食べたいか」と迫られたら「No」と言う。手に載せたくないものを口に入れることに抵抗があるからだ。
 感情を無視してデータだけを見れば、昆虫食が合理的だという判断には納得できる。食物生産効率の測定法として、同じ重さの食料を生産するのにどれだけの土地やエネルギー、そして水が必要になるかを比較する方法がある。この方法で生産効率を示すと牛肉は最悪の数字になる。まるで牛肉は地球を破壊してその破片を食べるような行為にさえ見える。
 だからといって、一側面しか測れない指標を頼りに人間全体の行動を変えていくのは性急な判断だ。フードロスをなくしたり、生産の効率化を図るほうが、新たに巨大なコウロギ繁殖場を作るより環境負荷が小さいかもしれない。もっと広い視野で判断をするべき。それなのに現状は、判断に足る十分な情報が示されないまま事が進んでいる。これが大きな不信感を生んでいる。
 情報不足は他にもある。コオロギの養殖方法には不透明な部分がある。肉の味と質は餌で決まる。雑食性を良いことにゴミで養殖していたら、間接的にゴミを食べさせられるようなもの。それは避けたい。何を食べさせて育てているのか示してほしい。
 とは言え、「美味しいコオロギを育てるために餌の小麦を育てています」と言われると「虫より小麦を食べさせてくれと」とモヤモヤした気分にもなる。だが、牛を育てるために栽培されるトウモロコシを奪って食べようとは思わない。
 結局のところ気分の問題かもしれない。だが、それは食文化という長い歴史が作り上げてきた人間の心の奥底に繋がる根深い問題。数字だけで簡単に乗り越えられるものではない。
 どうしてもコオロギを育てたいなら、まずはそれを養殖魚の餌にしてほしい。