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πに潜むすべての数字

by 唐草 [2012/08/06]



 数学のおもしろさや数字の不思議さを伝える際に良く引き合いに出されるのが、円周率π。演習と直径の比率という単純な関係でありながら、もっとも身近な無理数であり、無限に続く数字を検索すればどんな数でも見つかる。そんな風に紹介されているのを何度も見た。
 数学の先生がゲストに尋ねる。
「誕生日はいつですか?」
「1988/6/17です。」
「では、πの中から検索してみましょう。・・・。ほら、ありました。他にも電話番号なんかも見つかるんですよ。円周率って不思議ですね。」と台本を読むような感じで先生が言う。
 なんて流れをテレビとかで見たことがあるのではないだろうか?
 でも、これって十分に長い乱数表があればπじゃなくても十分に可能なトリックなのではないだろうか。100万桁ぐらいの乱数があれば、10桁ぐらいの一致があって全然不思議ではない。πは各数字の出現頻度が均一な正規数ではないかもしれないが、十分に実用的な範囲の乱数表としての機能を果たしていることの紹介に過ぎない。無規則な乱数から勝手に意味を読み取ってしまう人間の頭の方が不思議だと言えるだろう。
 ところで、何桁ぐらいの数までならπの中から探し出すことができるのだろうか?
 たとえば、ぼくの名前をローマ字表記にしてそれをアスキーコードに変換した数列をπの中から見つけることは可能だろうか?それとも漢字コードのままでも見つかるのだろうか?どうせ意味性を求めるのなら、素直に数字を検索するのではなく、暗号解読のように文字コード変換を挟んで文字列を探した方がおもしろい。
 無限猿の定理の話を考えてみよう。『猿がタイプライターの鍵盤をいつまでもランダムに叩きつづければ、ウィリアム・シェイクスピアの作品を打ち出す』という話だ。
 文字コードで円周率を検索すれば、きっと『ハムレット』の一説は至る所で見つかるだろう。現在計算が済んでいる小数点以下10兆桁の中に完全な『ロミオとジュリエット』は入っていないようだ。今後も円周率計算と文字列検索を続けていけば3000那由他桁ぐらいにたどり着く頃には、シェイクスピア作品全集がπの中にあるという話になっているかもしれない。
 3000那由他桁をさらに読み解けば、「生命、宇宙、そして万物についての究極の答え」も見つかるかもしれない。その計算には、750万年ぐらいかかるかもしれないけど。