カレンダー

2024/04
 
2930    
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

ずぶ濡れ

by 唐草 [2016/07/04]



 午後4時頃、仕事を終えて最寄り駅で電車から降りたらあまりの暗さに驚いた。電車に乗った30分ぐらい前は、もっと明るかった。その証拠にぼくはサングラスをかけていた。
 ところが、サングラスをしていたら前がよく見えないぐらい駅は暗かった。
 空を見上げれば、その理由は一目瞭然。
 今にも雨が降ってきそうな黒く厚い雲が、ノッペリと空を覆っていた。
 これは急いで帰った方がいい。モタモタしていたら雨に降られてしまう。そう判断して、改札を抜けると駐輪場へと走っていった。
 だが、空模様の変化はぼくの足よりも早かった。駐輪場への道の半分も行かないうちに大粒の雨がバラバラと落ちてきた。
 急いで帰るのは諦め、大きなひさしのあるビルへ飛び込んで雨宿りをするハメとなってしまった。
 止まってみると周囲の空気は、まるでサウナのように湿って重く暑かった。雨宿りをしていても汗で体が濡れていく。
 雷の音を聞きながら5分ぐらい経過した。すると雨がピタリと止まった。南の空を見上げると雲の流れが速い。小さな規模で降ったり止んだりを繰り返しているのだろう。そう判断したぼくは、この隙に家へと急ぐことにした。
 駐輪場に走り込んで自転車を取り出すと、まるで競技会に出るかのような勢いで自転車をこぎ出した。
 これが適切な判断だと確信していたが、結果は大失敗だった。
 自転車をこぎ始めて3分ぐらい経ったとき、北から白い壁が迫ってきた。視界を奪うほどの猛烈な雨がぼくを包み込んでいった。
 家に着いたときは、ずぶ濡れなんて表現が生易しく聞こえるほどの有り様だった。靴はバケツのように水をため込んでいたし、帽子は濡れて形が崩れてしまっていた。台風の時に自転車に乗ったとき以来の濡れっぷりとなった。
 家について15分ぐらい経ったら雨は止んだ。わずか30分の雨に自ら飛び込んでいった判断ミス。