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一駅先まで

by 唐草 [2019/03/09]



 年度末である3月に相応しい出来事が起こった。半年前に購入した定期券が期限を迎えたのである。
 ぼくが高校生ぐらいの頃まで定期を買うのは、なかなか骨が折れる作業だった。駅に出向いて細かいマス目がびっしりと並んだ原稿用紙のような紙に駅名やら個人情報をびっしりと書き込んで窓口に提出しなくてはならなかった。年に2回の行為なので高校生活の間に6回しか経験していないはずなのだが、間違えたらやり直しというプレッシャーのかかる作業は何十回も体験したかのようにベッタリとぼくの記憶に残っている。
 それも昔の話。今は、券売機の画面を数度タッチするだけでおしまいだ。継続購入ならAmazonもビックリなワンクリックで買える。本当に便利になったものである。
 だが、今回ぼくはワンクリックの継続購入を選ばなかった。もう一度、新規で定期を購入し直したのだ。それにはケチな理由がある。
 どうせ買うなら、同じ料金で目一杯乗れる区間にしたほうがオトクなのではないか?そんなことを思いついてしまったことに起因する。毎日利用している駅までの電車賃と、一駅先の隣の駅までの電車賃は同じなのである。だったら一駅先の駅まで買ったほうがお得じゃないか!
 しかもぼくの場合、状況がとてもややこしいのだ。
 実は一駅先の駅の方が物理的には職場に近い。でも、駅からの公共交通機関の便を考えると一駅前、つまり今ぼくが使っている駅で降りてバスを使ったほうが早いという現実がある。まるで時空がゆがんでいるかのようだが、これが真っ直ぐな道がほとんど無い山間部の現実なのである。だから、初めての定期は素直に利用区間だけを考えて購入をした。半年前のぼくは、隣駅を利用するなどという事態が起きるとは夢にも思っていなかったのである。
 蓋を開けてみれば、想定外の出来事なんて起きまくるのである。事実、この半年間でバスを利用できない日が3回ほどあった。そのたびに初乗り料金を支払って隣駅に移動するという、ケチなぼくには悔しい方法を選ばなければならなかった。
 その経験を通して固く心に誓ったのである。次に定期を買うときは、一駅隣まで買ってやると。
 そして、運命の日がやってきた訳である。
 利用期間が更新されたSuicaは、なんだか重くなったような気がする。数万円分チャージされているのと同じだというプレッシャーがそう感じさせるのだろうか?それとも本来の区間とは違う定期を購入したという後ろめたさが、まるで手枷のように感じさせるのだろうか?