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静かな夜に

by 唐草 [2019/10/14]



 超大型台風が上陸した12日の晩は、間違いなく歴史に残る一夜となった。自然の猛威が牙を剥き、想像もしていなかったようなことがいくつも起きた。甚大な被害に巻き込まれ、2日経った今でも日常からかけ離れた生活を強いられている方も少なくない。
 幸いなことに我が家は、なんの被害もないようだ(強いて言えば、住処を失ったネズミが出たぐらい)。坂の上という立地が今回ばかりはよい方向に転んだようだ。普段は帰路の上り坂に文句を垂れるばかりで、自然災害からぼくらを守る天然の城壁の上に住んでいることを忘れていた。禍福は糾える縄の如しと言ったところだろうか?何が良い方向にことを運んでくれるかなんて、平時には想像もつかないものである。
 ぼくが気圧計の針の動きに感嘆の声を上げていた晩(昨日の記事参照)は、前触れもなく糸が切れるように終わった。23時ぐらいのことだったっと思う。いきなりと風の音も雨が叩きつける音もしなくなったのだ。それまで1日中続いていた音が消えた。まるでイヤホンで聞いていた音楽が突然切れたときのような機械的な遮断に近いほどだった。
 ひょっとして、これが台風の目なのか?大空を移動する巨大な雲の姿を想像しながら状況を整理し始めた。予想通り本当に台風の目なら空を覆っていた分厚い雲は一時的に消えているはず。奇妙な静けさは星空をもたらしているのだろうか?
 この考えは、缶詰の野菜のように24時間以上雨戸を閉め切った部屋におとなしく閉じこもっていたぼくの好奇心を大きく揺さぶった。ネットで最新の気象情報を確認するよりも早く、雨戸を開けていた。
 窓の外は、柔らかい膜に覆われているかのような静寂が支配していた。生ぬるい空気が、動かずそこに置いてあるような不思議な感じだった。天を仰いでも星空はなく、街の灯りを鈍く映す雲に覆われていた。これが台風の目の中なのだろうか?ぼくには分からなかった。
 でも、日常とは決定的に違うことがあった。
 自分の耳がおかしくなってしまったのではないかと不安になるほどの静けさに包まれていた。誰も歩いていないし、車も通っていない。人々だけではなく、動物も息をひそめているのだろう。お正月の晩よりも静かだ。風も吹いていないので木々のざわめきも聞こえない。きっと山深い登山道より静かだろう。
 激動の1日は、静けさとともに終わりを告げた。