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定期を買う

by 唐草 [2018/09/06]



 この歳になっても財布の中に5万円ぐらい入っているとドキドキしてしまう。5万円なんてある人にとっては1回の夕飯代に過ぎないかも知れないが、ぼくにとってはそれなりに大金だし、滅多に財布の中に入っていることのない額である。
 現金を持つのがイヤならカードを使うという手もあるが、ぼくは旧態依然の現金派だ。年間の使用額が少ないのでポイントの恩恵にあずかれないというのも現金派の要因のひとつ。でも、一番の理由は「どこかでミスを犯しそうだから」というカード使用への不安感から来ている。別にクレジットカードの仕組みとかを疑っているわけではない。あくまで、カードを落としたり番号を流出させたりという自分のミスを恐れている。
 だから、ぼくはビクビクしながらも現生を持ち運ぶわけだ。
 今日、比較的大きな額を持っていたのには理由がある(理由なく大きな額を持ち歩ける身分になりたいものだ)。それは、電車の定期券を買うためである。多くの人にとって定期券なんて、珍しくもないし、面白いものでもないだろう。人によっては小学生のときから持ち始めて、仕事を定年で退くまで持ち続けることもあるかも知れない。まるで人生の伴侶のようである。
 だが、ぼくにとっては違う。地に足つけずに西へ東へとフラフラしていた根無し草のぼくにとって定期券は縁遠い存在だった。それは、まるで最高レアの幻のカードのようであった。最後に定期券を買ったのがいつなのか思い出せないほどにぼくの生活からは遠ざかっていた。しかし、生活というのは突如一変することがある。特にぼくのようにハッタリで世渡りしている人間の場合は。
 いつもはチャージのためにしか並ばない駅の券売機をポチポチ操作しながら定期券の購入手続きを進めていった。前に定期券を買ったときは、こんなに便利ではなかったような気がする。でも、Suica定期券を使っていた記憶はあるんだけどなぁ。
 券売機に1枚ずつ1万円札を入れていく。お札が1枚飲み込まれるたびに、自分の生活が変わっていくような気がした。すでに起こっていた変化にようやく気がついたという訳だ。
 自称フリーランスという胡散臭い肩書ともしばしお別れである。たぶんこの肩書に戻ってくるとは思うけれど、それはちょっと先のことだと思う。その間に、何回定期券を買うことになるのだろう?