by 唐草 [2015/04/11]
ネットを見ていたらSF好きならこれは読んでおけと推されている一冊の本があった。その本を借りようと、ぼくが住んでいる市の図書館の蔵書を検索してみた。だが、残念なことに20年ぐらい前のマイナーなSF小説なので、我が市には蔵書されていなかった。そこで、近隣のいくつかの市の蔵書を検索してみた。
まったく便利な時代だ。家にいながらにして近隣図書館のすべての蔵書を検索できるのだから。検索の結果、すぐ隣の市の図書館にあることが分かった。少し遠いが、他に選択肢はなさそうだ。
隣の市の図書館を訪れたのは久しぶりだった。なんだか前に訪れたときと様子が違う。とは言え、所詮図書館。利用者カードと借りたい本を窓口にもっていけば事足りる。
目的の文庫本をもって入り口付近のカウンターへと向かった。
大勢の人が来ている割りに窓口が空いている。良いタイミングだったようだ。
さて、貸出窓口はどこだ…。
あれ?貸出窓口がない。ん?返却窓口もない。掲げられているのは総合受付の看板のみ。
一抹の不安を感じながら、総合受付に本を置いた。
「返却ですか?」と係員に声をかけられた。
「いや、借りたいんですけど…」と自信なさげに答える。
すると係員は、思いも寄らぬことを告げた。
「貸し出しは、セルフになったんですよ。こちらに来て下さい」
なんだって!?セルフ貸し出し?
案内されるままに図書館入り口付近に置かれたPCの前へと向かった。
「机に借りたい本を置いてください」
言われるままに本を置く。その瞬間、PCに本のタイトルが表示された。いったいどうやって本の情報を読み取ったんだ?バーコードを読んだ様子はない。
「次に利用者カードを指定の場所に置いてください」と言われた。
バーコードリーダーのような赤い光が当たっている場所にカードを置くと、利用者情報がPCに表示される。
「これでよろしかったら画面の『OK』をタップしてください」
ぼくが画面をタップすると貸し出し処理は完了した。
なんてことだ。しばらく行かない間に隣の市の図書館はこんなにもハイテクになっていたのか。ぼくが借りた20年前のSF小説内で描かれている空想の世界を遥かに凌駕している現実が目の前に広がっていた。
なお、借りた本を確認すると表紙の内側にICチップが埋め込まれていた。これが、台に置いただけで書籍情報が表示されたカラクリか。