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タッチできないよ

by 唐草 [2021/05/26]



 去年ぐらいに「ゲームボーイを今どきのスマホに慣れ親しんだ幼稚園児に渡すとどうなるか」という実験めいた記事を読んだ。彼らはは画面をペタペタと触ったそうだ。生まれたときからスマホが傍にある世代にとって液晶画面は、映像を写す装置であると同時にタッチ操作のための入力装置なのだろう。
 この小さな実験によって、世代間の機器に対する基本的な考えの違いが示された。ある意味で予想通りの展開なのかもしれない。それでも、物理ボタンがタッチパネルに負けたという結果には驚きが隠せない。
 プロダクトデザインをする時にもっとも重要なのは、人間の自然な感覚に基づいた操作を提供すること。出っ張っている物があれば押してみたくなるとか、同じ大きさと形のものを重ねたくなるとかそうい感覚的な行動の利用である。例えば取っ手がついた扉は押戸か引戸かすぐには判断できないが、ノブも何もついていなければ瞬時に押戸だと判断できる。これは操作の可能性を減らすことで、自然に人の行動を制御しているからだと考えることができる。
 こういう考えに基づくと、ボタンを押すというのは極めて自然な行動となる。特にゲームボーイのようにビビットな色のボタンならなおさらだ。従来なら何も知らなくても誰もが押すと考えていた。
 ところがテクノロジーの進化が、ぼくらの常識を変え始めていることを実験は示している。もはや物理ボタンは、画面内の仮想ボタンに負けている。
 とは言え冒頭の実験は、科学的な評価を下すにはサンプルの少ない実験だった。特異な結果を面白おかしく書いただけの可能性も否定できない。このご時世、「いいね」のためなら誰もが魂を売ってしまう。ぼくは面白い記事だと思いながらも、結果を訝しんでいた。
 ただ、それも今日まで。
 今日、駅のデジタルサイネージの画面を何度もペタペタとタップしている3歳ぐらいの女の子を見た。タップを誘発するのに物理的な出っ張りなんていらない。画面であることが何よりも重要のようだ。
 人と機械の間に新しい常識が、たしかに芽生えようとしている。触っても何も起こらない大きな画面を前に彼女は何を思っていたのだろう?