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新世紀の挨拶(下)

by 唐草 [2012/01/07]



前日からのつづき

 次に友好目的の接触を考えてみよう。
 友好目的ならどんな惑星だって構わない。資源があろうが無かろうが関係ない。文明の進歩具合だって構わない。
 こちらが友好目的での接触を試みていることを相手に伝えることが最大の課題だ。いきなり宇宙船で着陸して地球の言葉でベラベラ喋るのでは、目的を正しく伝えることはできない。「Hello」が、その星の言葉で「宣戦布告」だったりしたら大変だ。こんな不幸な偶然を避けるためにも、入念にその惑星のコミュニケーション方法を研究する必要がある。
 そもそも音によるコミュニケーションが行われているとは限らない。体の色を変えるような視覚に頼る方法かもしれないし、体の質感を変化させる触覚によるコミュニケーションかもしれない。はたまた、人間には知覚不能な感覚によるコミュニケーションだってあり得る。とにかく現地の生命体が行っているコミュニケーションを体得することから始めなくてはならないはずだ。映画『未知との遭遇』のような限定的な人間との意味の伴わない交流では、はるばる宇宙を旅をした甲斐がない。
 文化人類学者や言語学者、生物学者達が知恵を結集して苦労の末にコミュニケーション手段を確保したとしよう。ようやく伝えるべきか具体的な内容を考える段階へとたどり着いた。伝えるべきは、訪問目的と敵意がないこと、そして自分たちの正体の3点だろう。これらを考慮すると、こんな感じの挨拶になるだろう。きっと流暢には意図を伝えられないだろう。
 「こんにちは!私たちは、他の惑星からこの惑星にやってきました。あなた達の言葉で言うところの『惑星外生命体』です。訪問の目的は、異なる知的生命体間の友好を結ぶためです。あなた達が、私たちの訪問を望まないのであれば、すぐに立ち去ります。」
 なんてことだ。こんなにも色々考えてきたって言うのに「私たちは、『惑星外生命体』です。」って挨拶に至ってしまった。そうか「ワレワレハ、ウチュウジンダ」という挨拶って、自らのことを相手の立場から説明している実に理にかなった挨拶だったのか。
 これからはそんな挨拶をしてくる宇宙人に出会ったら、疑いのまなざしを向けるのではなく、彼らのコミュニケーションを図ろうとする努力に賛辞を送ることにしよう。これが、友好的な交流を待つ者の使命なのだから。

おわり