by 唐草 [2013/12/13]
前期からずっと午前中の授業を担当している。9時からの1限の授業に出るべく苦手な早起きをして、どうにか学校へ向かう生活にもようやく慣れてきた。
朝日を浴びて校門をくぐるというと大げさかもしれないが、ぼくにとって授業に出ることは朝の出来事となっていた。
高台にある教室の窓からは、日の光に照らされた街並みが見えている。それが、ぼくの学校での日常。
ところが、今週から4限5限の授業を担当することになった。午後3時から始まり6時過ぎまでの授業である。
何限の授業であってもぼくがやることは変わらない。いつも通りに授業を進めていた。
授業も終わりが近づいてきたとき、ちょっと余裕があったので窓の方に目をやった。
その瞬間、一瞬だけ自分がどこにいるのだか分からなくなった。
窓の向こうは、真っ暗な闇に包まれている。まるで雨戸でも閉まっているのではと思うほどに暗かった。これは、ぼくの知っている教室の風景ではない。
ぼくが知っている教室からは、いつだって明るい街並みが見えている。こんな幕に包まれたようなのっぺりとした光景は知らない。
本当に1秒にも満たないわずかな間であったと思うが、脳が目の前の光景を全力で否定していた。もちろんすぐに外が夜であることを理解したが、ここではないどこかにいるような妙な感覚は授業が終わるまで残ったままだった。
約40回目の授業で初めて目にした夜の景色。ただの暗い景色にこんなにも驚くなんて、その事自体に驚いてしまう。
ぼくにとって教室から見える景色は、あたかも舞台の書き割りのようなものだったのだろう。