カレンダー

2020/11
     
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

名前しか知らない本

by 唐草 [2024/03/23]



 「名前は知っているけれど読んだこと無い本ランキング」を日本で開催したら『古事記』はかなり上位に食い込んでくると思う。現代に生きるぼくらにとって『古事記』は、教科書でしかその名を見ない幻の本と言っても過言ではない。
 そんな『古事記』を原文で確認したいことがあった。
 熊野の山の荒神がどのように描かれているのかを確認したかった。一説によると熊らしい。本当に熊なのだろうか?現代語翻訳や学者の解説ではなく、原文でどう書かれているのかを確認したかった。
 『古事記』はどう考えても著作権が切れているので、ネットに全文掲載されているはず。ぼくの予想通り全文掲載されていたが、その内容はぼくにとっては予想外だった。
 漢文だったのだ。
 奈良時代に編纂された本なので当然だ。だが、そんなこと考えてもいなかった。この新鮮な驚きは教養の欠如としか言えない。
 漢文に面食らったが、気を取り直して荒神の正体を探る。記述があるのは中巻の冒頭付近。人物名を手がかりに該当箇所を見つけるが、漢文なので読めない。
 AIに翻訳を頼みたいが、古典には対応していないだろう。ChatGPTがレ点を振ってくれるとは思えない。
 そこで発想を変えた。漢文ということは中国語だ。日本の古典として翻訳するのではなく現代の中国語としてAIに翻訳させてみたらうまくいくのではないか?
 一段落をまるまるGoogle翻訳にかける。
 予想は的中した。冒頭は日本語として成立しているだけでなく、うろ覚えの内容と一致した。だが、長文を放り込んだので、訳文の後半はおかしかった。長い固有名詞に混乱したのだろうか?支離滅裂だし、原文には登場しない謎の人名すら出てきた。
 その訳文は、熱があるときに見る悪夢みたい。
 それでもどうにか訳せているんだからすごい。中国語の基本は、概ね1300年ぐらい変わっていないとも言える。
 では逆に、かな漢字混じりの『源氏物語』をGoogle翻訳を使って外国語に訳したらどれぐらいのクオリティーになるのだろう?今回の訳文のような38.5℃の悪夢がかわいく見えるものが出力されそうだ。