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我々は親しみと敬意を持ってこう呼ぶ

by 唐草 [2009/06/17]



 東京都のど真ん中を貫くオレンジ色のラインがまぶしい交通の大動脈。一日に何十万人もの人々をギュウギュウ詰めにしてせっせと運ぶ。それが、中央線(快速)。
 私のように生まれてこの方ずっと中央線沿線に住んでいる中央線人にとって、このまっすぐな路線はまさに生命線だ。どこへ行くときも何も考えずに中央線の駅を起点としてしまう。折り紙を折るときのように慎重にならなければ、並行して走る私鉄の存在を意識することは難しい。それほどまでに、この路線は生活に密着しているのです。
 しかし、この路線は一筋縄では語れない。
 世界有数の過密度に加えて特別快速やら特急が複雑に交差するダイヤグラムは、ガラス細工のように繊細だ。時間通りに来た電車が、ダイヤ通りかどうかを知るすべはない。
 また、駅へ近づいてくる電車をじっくりと観察できる直線的な路線は、絶対に超えてはならない最後の決心をそっと後押してくれるとも言われている。幸運なことにこれだけ中央線を利用しているが、私は人身事故の現場に居合わせたことは無い。だけれども、ホームの端にポツンといる人を見ると、いつでも不安になる。
 伝統の路線の設備は、すでにボロボロ。信号機からポイントまでありとあらゆる設備が、次々に壊れていく。新しく導入した車両だって、次々に故障していく。
 過密ダイヤのことを考えると、もはや開くことが不思議でならないほどに閉まり続ける踏切がいくつもある。
 人身事故で遅延。信号機故障で遅延。車両故障で遅延。昨日も今日もありとあらゆる理由で遅延が続く。そんな振る舞いを目の当たりにしている我々中央線人は、中央線のことを親しみと敬意を込めてこう呼ぶ。
 「王者」と。