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人類の敗北

by 唐草 [2023/01/21]



 昨年、北海道で「OSO18」という識別名のヒグマが放牧された牛を襲う事件が立て続けに起きていた。
 被害が広がるにつれて熊の恐ろしさが次々と明らかになった。姿を見せない慎重さ、罠を避ける賢さ、そして牛を易々と倒す獰猛さ。初めは熊による農業被害という地域のニュースでしかなかったが、いつしかヒグマ恐怖とともに語られる全国ニュースになっていた。
 ぼくが知ったのは全国ニュースに載った頃。UMAなどのオカルト話が好きなので不謹慎にも「三毛別羆事件の再来か!」と恐怖したものだった。
 話題はどんどん大きくなりNHKは特集番組まで作った。番組では、姿の見えぬ1頭の熊に専門家や地元の方々が苦慮している姿が流れた。罠は見抜かれ、行動分析も通じない。人々を嘲笑うかのように熊は神出鬼没だった。
 ぼくが見たOSO18に関する最後のニュースは「牛に敗れ被害が止んだ」というもの。時期的にOSO18が死んだり、牛を恐怖するようになったのか、それとも冬眠で活動が途絶えただけなのかは分からない。
 何れにせよ最後のニュースがOSO18の負けであることは興味深い。
 これまでに多くの牛を葬ってきた無敗の熊がどう負けたのかを調べると自然のパワーバランスの妙が見えてきた。
 放牧されている牛の多くは安全に飼育するために角を切っている。そのため襲われても反撃もままならない。ところが、最後に被害にあった牧場では自然な飼育を目指すために角を切っていなかったし、そこで襲われた牛の角にはヒグマの痕跡が残っていた。
 牛は痛手を負いながらも角で最強と謳われた熊を撃退した。そして被害は止んだ。
 大勢の人間が膨大な時間を掛け、多量の知恵を絞っても手も足も出なかった熊を自然な牛は撃退できた。この事実に人の努力なんてものは自然の前ではほぼ無力なんだと痛感させられる。そして同時に動物は人の庇護なんてなくてもたくましく生きているんだと目を覚まされた思いだ。
 それは初めから自然に委ねて何もしなければここまで大きな被害は起きなかったとも言える。被害が広がったのは自然を制せるという人の驕りにあるのかもしれない。皮肉なものだ。