by 唐草 [2021/11/16]
散歩が好きだ。歩くのは、緑に囲われた自然でもいいし、建物が密に並ぶ街でも構わない。自然を歩くけば、開放感や季節感を肌で感じられる。街の中を歩けば、人々の営みの多様性を目にできる。好奇心を持って眺めれば、どんな場所だってそこならではの面白さを見つけられるものだ。
コロナ以来、見知らぬ場所へ出向いて散歩する機会がなくなってしまった。もっぱらの散歩は、文字通り徒歩圏の狭い範囲に限られている。確かに範囲は狭くなった。だからと言って散歩が退屈になってはいない。むしろ限られた範囲を頻繁に歩くことで季節の移ろいをじっくりと見つめるられた。冬枯れの小路が1週間で花の路に変わることもあれば、キノコの群生に驚かされることもあった。
ちゃんと前を向いて歩いていれば、ぼくらの周りには小さな驚きが満ちている。
散歩の成果をデジタルで記録できるようになったのも楽しみのひとつ。歩数という分かりやすい数値で小さな冒険の記録が残るのは楽しい。昔から歩数計はあったが、身につけるのを忘れることも多かったし、何より永続的に記録を残せなかった。その場限りの記録は一時的な達成感こそ得られるものの、前回との比較といった継続的な楽しみにはつながらない。今はスマホの歩数計がぼくの冒険の書という感じだ。
スマホ片手に散歩を楽しんでいると言うと、位置情報ゲームとの相性が抜群に聞こえる。マーケティングとしては正しい分析かもしれないが、ぼくのスマホには『ポケモンGO』も『ドラクエウォーク』も入っていない。位置情報ゲームは1つもインストールされていない。
『ポケモンGO』リリース当時、ぼくだって話題のゲームを試した。アプリを通して感じたのは、ゲームがあると歩数を稼ぐモチベーションは上がるが、何度もスマホを操作するので散歩のペースと質が落ちるということだった。ぼくの求める散歩はいつだって歩きがメイン。見たいのは目の前に広がる景色。歩きと視線を遮ってまで画面を見る気は毛頭ない。
新しいピクミンアプリには期待したけど、やっぱりぼくのスタイルには合わなそう。だから今日もスマホをポケットに入れたまま一人孤独に街を歩く。