by 唐草 [2023/02/14]
♪丸い緑の山手線 真ん中通るは中央線
元気の良いメロディとともにこの歌詞で始まるヨドバシカメラの歌。関東在住のぼくは幼い頃からテレビCMで親しんでいるし、新宿店や秋葉原店で耳にしたこともある。
この歌詞って東京近郊在住者でないと意味が分からないのでは?山手線が東京の主要な駅を結ぶ旅客輸送の大動脈で、緑ラインの車両の環状線なのは有名だろう。
一方の中央線は、山手線より格落ち感がある。ぼくは中央線人を名乗るほど中央線に依存しているが、それは多摩と都心を結ぶJR線が中央線しか無いから。
いくら新宿を中心に発展してきたヨドバシカメラとは言え、歌い出しが地方路線なのはご当地色が強すぎる。そう思うこともあった。
だが、これは杞憂だった。そして、聞いたこともない歌詞の話をしていると思った方も安心して欲しい。
ヨドバシカメラの歌は、店舗によって異なっている。梅田店は「♪若者集まる梅田には」で歌が始まるそうだ。どの店舗もご当地を押し出す歌詞になっている。関東のテレビCMで有名な「山手線と中央線」で歌が始まるのは新宿店と秋葉原店だけ。その新宿店と秋葉原店でも途中から歌詞が変わる芸の細かさ。
つまり、ヨドバシカメラは自社ソングを替え歌することで全国をカバーしている。強引な帳尻合わせとも思える対応だ。
一見強引に見える替え歌対応だが、メロディーの来歴を知ると納得できる気がする。日本でヨドバシカメラの歌として有名な曲は、別の歌の借り物なのだ。
オリジナルはアメリカ南北戦争時代(1861年頃)の流行歌『ジョン・ブラウンの亡骸』を起源とする『リパブリック讃歌』という曲。この曲はアメリカでは愛国歌として広く知られているそうだ。
伝統ある愛国歌が極東の地で家電量販店のテーマソングになろうとは。ヨドバシカメラを訪れたアメリカ人は、どんな気分で日本語の歌詞を理解できないままこの曲を聞くのだろう?やはり親米派の店だと思うのだろうか?
もし愛国心を刺激された後で、英語版ヨドバシカメラの歌を聞いたらどう思うのだろう。理解に苦しむ愛国者の顔を見たい。