by 唐草 [2023/03/12]
時々通る道で目に入るIHIの看板。いつ見ても、バランスのいいアルファベットの配置だと感心する。概ね上下ともに線対称であり、同時に点対称でもある。また字形も重工らしく鋼材を連想させる。
ロゴに感心しているもののIHIの製品を購入したことはない。それは当然だ。重工業メーカーの製品といえば化学プラントや発電所のような施設そのものだったり超大型工作機器が中心。個人で買える代物ではない。
IHIのグループ会社がターボを作っているので、個人でもIHI製品を買うこともできなくはない。とは言え、一般的な生活でターボが必要になる機会なんて滅多に無い。
ぼくら一般人には縁のないIHIだが、日本の重工業企業の中では知名度が高い方だろう。売上でも三菱重工、川崎重工に次ぐ第3位なので名実ともにある企業と言える。
ぼくが親近感を抱くのは、看板を見る機会が多いからというだけではない。IHIというシンプルな企業名が親しみやすさを生んでいるからに違いない。字面だけなら三菱重工よりもずっと軽やかだ。
IHIという社名は、石川島播磨重工の英語名であるIshikawajima Harima Heavy Industoriesに由来する。もし石川島播磨重工のままだったら地域色が強いように見えてしまい、元財閥系に肩を並べる企業には思えなかったかもしれない。もっとも画数の多い漢字は重工業に似合っているようにも思えるが…。
IHIの英語名を眺めているとある疑問が湧く。
Iに左右を挟まれたHは、HarimaとHeavyのどちらのHなのだろう?
会社の沿革を紐解けば石川島造船所が播磨造船所を合併してできた会社だと分かる。それならどちらの名前も残したいと考えても不思議はない。他業種では銀行のように三井住友のSMBCや三菱UFJのMUFGのように双方の名前を残した例もある。
同じように考えれば、IHIのHは播磨のHのように思える。
ところが、そうではない。
IHIのHはHeavyのH。三菱重工のMHIと同じ考え。長い石川島播磨の略がたった1文字の”I”なのだ。
播磨側は、さぞ無念なことだろう。