by 唐草 [2019/09/04]
この夏のタピオカブームは、メディアが作り上げた幻の盛り上がりではなかった。久々に実感のあるブームだった。
ステマのカラクリがバレて以来、どのブームにもメディアの影がちらついているように見えた。日本で流行っているとされているのに、まるで海外の出来事のようにネットやテレビを通してしか見ることのできないブームばかりだった。
ぼくが知る限り3度目となるタピオカブームも、昨今の他のブームと同じようにまやかしに過ぎないのだろうと考えていた。でも、ぼく予想は外れていた。前のブームのときに食べてあまり美味しいとは思えなかったので、今回のブームでぼくがタピオカを口にすることはなかった。でも、街を歩いているとカエルの卵が沈んだ泥水の入ったようなプラスチックカップを持った若者をたくさん見た。最寄り駅では、コーヒーショップとドーナッツ屋、コンビニが3軒並んで仲良くタピオカアイスティーの看板を掲げていた。
今回のブームでいったいどれだけのタピオカが日本へと輸出されたのだろう。食に関してだけは無尽蔵に貪欲な日本人が、世界のタピオカを買い占めていたって不思議はない。もしかしたら、原材料であるキャッサバが世界的に高騰したり不足していたかも知れない。熱帯地域の主食が、本来食べるべき人々に行き渡らなかったのではないかと心配すらしてしまう。
もしかしたら、一時的に不足が起きていたかもしれない。でも、そのことに関してあまり深刻に心配する必要はないだろう。熱帯地域を憂うぼくを明るくするニュースがあったのだ。
秋が近づくと、3軒並んでタピオカミルクティーの看板を掲げていた通りは一変した。コンビニはすでに看板を撤収している。注目すべきは、コーヒーショップの看板だ。そこには驚くべき文字が並んでいた。
「今なら無料でタピオカ2倍に増量中!」
目を疑うような内容だが、確かにこう書かれていた。
まるで「ちょっと待ってください。今ならこのお値段で同じものがもう1台!」と語る通販番組のようなサービスっぷりである。通販番組を見ているときと同じで、コーヒーショップ対して素直に「よっ!この太っ腹!大盤振る舞いだねぇ」と声をかけてあげる気にはならない。
なぜ、ブームのタピオカを大サービスしているのか?
その理由は考えるまでもない。ブームが完全に去ったのだ。すでに多くの人がタダでも欲しくないと考えているという意味だ。今は、在庫として備蓄されたタピオカの消費に必死になっているに違いない。無事に捌けるといいね。