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バイクに怯える

by 唐草 [2024/03/29]



 ここのところ小型バイクが近づいてくる音を聞くとビクッとしてしまう。その後にポストになにか投函される音がしたら生きた心地がしないし、インターホンがなろうものならショック死しかねない。
 なぜなら、ぼくにとって死刑宣告のような郵便物が届く可能性があるからだ。
 ぼくが恐れているのは税務署からの修正申告の書類だ。
 脱税の発覚を恐れてビクビクしているのではない。たかだか数万円のためにこんなにビクビク過ごすのは割に合わない。ちょっと多めに納税して心の安寧を買うほうがマシだ。
 ぼくが恐れているのは、自分の申告が間違っていて修正を求められる展開。
 これまでに何度も確定申告をしてきた。だが、久々の申告はだいぶ変わっていた。マイナンバーが本格運用されるようになってからは初めての申告だった。源泉徴収票が存在しないことに戸惑ったし、適格事業者関連のことはさっぱりわからないままの申告となったのも痛手だった。給与ではない収入もあり別の資料を添付する必要もあった。
 だから今回の申告は、これまでの経験の半分ぐらいしか活かせないような状態で驚きと混乱の連続となった。それは久々にログインしたオンラインゲームがアップデートでいろいろ変わったことに戸惑うのに似ている。
 正直言って、ちゃんと申告できた気がしない。もちろんぼくとしてはできる限りを尽くした申告だと自負している。とは言え、それは不勉強なまま臨んだ試験の回答を提出するときのような儚い自信だと言わざるを得ない。
 だから、郵便配達の気配を感じるたびに今日こそ修正申告の書類が届いたのではないかと肝を冷やしている。
 ついに恐れてた状況が訪れた。
 郵便局のバイクが我が家の前で止まり、郵便配達員が我が家のインターホンを鳴らした。書留などの本人確認が必要な郵便が届く予定なんてなにもない。いよいよ申告ミスを責める郵便が届いてしまったと腹をくくった。
 いっそこれでビクビクする毎日とおさらばできると開き直りさえした。
 だが、届いたのは全然予期していなかった別の郵便だった。まだ怯えた毎日が続くようだ。嬉しいやら悲しいやら。