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母校に面影無し

by 唐草 [2017/06/04]



 先日、高校の同窓会から「校舎の建て替えが終わったから学祭に来い」と書かれた葉書が届いた。
 同窓会と言ってもぼくが所属していた代の同窓会ではなく、OB会と呼ぶのが正しい全卒業生が問答無用で所属させられる会だ。そんな会には何の興味もない。ただ、数年にわたる大規模な工事の経て完成した新しい校舎というものは、この目で見ておきたい。
 と言う訳で、いつものようにひとりで母校の学祭へ潜入することにした。
 校門をくぐった瞬間に思った。
「ここどこだよ!?」と。
 学校の変わり様は、言葉を失うとどころか、目を疑うレベルだった。結論から言えば、ぼくが在籍していた当時「高三棟」と呼ばれていた棟と体育館以外、すべて変わっていた。
 中学棟も高校棟も理科系の実験室棟も学食も図書館なにもかも別物になっていた。ガラスを多用した明るい教室。白を基調とした清潔感のある廊下(白すぎて病院のようだったが)。設計思想が、21世紀的である。明るく、軽く、開放的にといった具合だ。
 ぼくが知っている、コンクリートと厚ぼったいペンキで覆われた昭和の香りが色濃く残っていた校舎はどこにもなかった。ハッキリ言って、ここまで変わってしまうともはや別の学校である。リフォーム後の我が家を見るような喜びは何も無い。
 建物が変わったことも大きな変化だが、ぼくにとってはそれ以上の変化があった。土足でなくなっていたのだ。エントランスで靴を脱いで上履きに履き替えるスタイルになっていた。
 この変化は、学祭には不向きな変化だったようだ。来場者に靴を入れるビニール袋とスリッパを配っていた。なにより、いろいろな施設が屋内になってしまったので、学祭名物の模擬店屋台が激減してしまっていた。きれいなんだけど、お祭らしい雑多な感じがなくなっていた。
 面影のない母校には、なんの感慨もなかった。ちょっとだけ、本当にちょっとだけなのだが、帰るべき場所を失ってしまったような感覚に囚われた。
 あと、ぼくたちの代が入学時に記念植樹をした場所は、校舎になっていた。あの木は、切られちゃったんだろうなぁ。それは、とても残念な発見であった。