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偽チーフ

by 唐草 [2018/03/26]



 先日買ったジャケットには、ちょっとした遊び心がいくつかある。分かりやすいところだと襟にあるフラワーホール的な穴に安っぽい銀メッキのピンバッジが付いていることが挙げられる。ぼくの買ったジャケットのピンバッジはクリスマスツリーのてっぺんで輝いていそうな星だった。オマケというのにふさわしいチープさである。でも、それが硬い雰囲気を崩してくれているように感じている。フォーマルな場面なら外せばいいし。
 もうひとつの遊び心は、胸ポケットにある。胸ポケットの裏地はハンカチのような模様と生地。裏地を引っ張り出すとまるでポケットチーフをしているように見えるのだ。パッと見ただけでは、とてもポケットがひっくり返っているようには見えない。むしろものすごくフォーマルな姿に見える。でも、実際はポケットの裏地だ。
 ぼくはポケットチーフに使えるようなシルクのハンカチなんて持っていない。また、ポケットチーフが必要なほどドレスコードが厳しいフォーマルな場所に赴くこともまずない。一生縁が無いと思っていたポケットチーフを思わぬ形で実現することとなったのだ。
 慣れぬポケットチーフに苦戦しているのもまた事実である。
 いかんせん偽ハンカチなので形をキープするのが難しい。所詮は裏地である。また、どの程度ポケットから見せればいいのかも分からない。これ見よがしに大きく出しているのも変だし、逆に巣穴から辺りをうかがう小動物のようにちょっとだけ顔を覗かせている程度ではポケットチーフの存在に誰も気が付かないだろう。
 いったいどのぐらいの量をどんな形で出せば、本物っぽく見えるのだろうか?よく分からないので引っ張ったり引っ込めたりを繰り返している。なんだかジャケットをデザインしたデザイナーの遊び心に遊ばれているようにしか思えなくなってきた。