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王者の日常

by 唐草 [2015/06/11]



 久々に人身事故に巻き込まれてしまった。無論、ぼくが電車に轢かれた訳ではない。
 人身事故の巻き込まれ方には2つのタイプがある。1つは、駅に着いたら電車が止まっているのを知るパターン。もうひとつは、電車に乗っている際に人身事故が起こり車内に閉じ込められるパターン。今日は、後者だった。ぼくの乗っていた車両が事故を起こしたわけではなかったのが不幸中の幸いと言えるだろう。
 中央線は本当に人身事故が多い。利用者が多いので事故が多くなってしまうのはしかたがない。ただ、厳密には事故ではなく自殺が多いというのが悲しい現実だ。「中央線は血を吸って走る」とか「総武線と同じ黄色い車体だったが、血に染まってオレンジ色になっている」などと揶揄されることすらある。
 事故が起こったことを車内放送で理解するような人は、中央線の素人だ。ぼくのような四半世紀以上にわたって中央線を利用している人間なら、いつもと違う場所で減速しだしただけで人身事故を疑う。今日も駅と駅の間で妙な減速を開始したので、ピーンときた。悲しいかなその予想は的中していた。
 駅間で事故に巻き込まれると、どうしようもなくなる。こういう時にお腹が痛かったら悪夢だろう。一昔前の中央線だったら、その場に止まったままだった。最近は運行管制がましになったので最寄り駅までは動くようになっている。それでも普段数分でつく隣駅まで10分以上かかっていたが…。
 駅に着いてからどう動くのかも悩ましい問題だ。事故発生から復旧まで1時間ぐらいかかる。一度電車を降りてヒマを潰すべきか?それともおとなしく復旧を待つべきか?この判断は、止まっている駅や時間帯によって異なってくる。ラッシュ時間帯だとすし詰めになってしまうので抜け出た方が賢い。小さな駅だと駅周辺の喫茶店は時間つぶしの乗客でごったがえしてしまう。
 電車を降りるか迷ったが、今日は座席、それもシートの端に座れていたのでそのままおとなしく復旧を待つ道を選んだ。結局、54分遅れで電車は動き出した。かなり長いことシートから動かずに座っていたことになる。
 事故が起きても時間帯や場所を見極め冷静に動く。こんな感じで中央線利用者は人身事故に慣れきっている。そこに事故を悼む気持ちなど微塵も存在しない。これが、血塗られた王者を利用する心構え。