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夜の1時間、朝の2秒

by 唐草 [2023/06/18]



 時間のある週末は翌日のことを考えなくていいので、夜遅くまでゲーム開発に集中できるゲーム開発は仕事だと言っているが、実質的には趣味だということに異論はない。お金になる趣味にできればいいなと、皮算用をしているのが正確な認識だ。
 プログラムが期待通りに動いたときの喜びは、他では味わえない圧倒的な達成感と充実感、そして少しの征服感に満ちている。きっと脳内麻薬がドバドバと出ているのだろう。だから、ぼくはプログラムを趣味にしているし、仕事にもしている。いわばジャンキーなのだ。
 仕事でプログラムを書いているときも趣味で書いているときと同じ種類の満足感を得ているが、感じる満足感の純度が低い。納期、コスト、急な仕様変更、面倒なミーティング、意味不明な連絡などテンションを下げる要素に満ちているからだ。これらの痛みを超えることができるのは、ひとえにプログラムが動いたときの充実感があるからだ。でも、それは怪我の痛みに耐えるためにモルヒネみたいなヤバメの鎮痛剤を打って行軍するような行為。脳内麻薬の多幸感を味わえないのも仕方がない。
 でも、趣味のときは違う。体内から放出されたすべてのヤバい成分が、ぼくをスポーツで言うところのゾーン的な状態へと導く。そうなると、小さな自室は音の存在しない限りなくバイナリに近い世界へと変化する。何時間でもコードを書き続けられる気分になる。
 残念なことにその集中力は、脳内麻薬が見せた幻でしかない。
 昨日もゾーンでゲームのプログラムを書き続けていた。午前2時にワープすると敵が透明になるバグが見つかった。負荷低減のためにエリア外の敵を描画していないことが裏目に出てしまったようだ。
 脳内麻薬由来の集中力があるので午前2時でも眠くない。この状態ならすぐに直せるだろう。そう思って、試行錯誤しているうちに午前3時を回っていた。
 1時間向き合っても進展がないという状況は、ショックだった。しかし、そのことがぼくを我に返してくれた。
 寝よう。
 そして夜が明けた。
 もう一度、プログラムを確認する。2秒で原因は判明。
 脳内麻薬より睡眠だな。