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すべては勇者のために

by 唐草 [2012/03/04]



 RPGで遊んでいるといつも許せないことがある。魔王軍の戦略の低さだ。なぜ初めから強力な魔物を動員しない?無限に魔物を生み出せるだけの資源量があって人海戦術はお手の物なのに、どうして易々と少数精鋭の勇者チームに負けるんだ。ぼくが魔王軍の軍師だったらもう少しまともな戦略を考えるぞ。
 「ゲームなんだから」と言われてしまえばそれまでなのだが、それを理解していてもなお合理的な答を求めようとしてしまうのがぼくの性。
 PSPの『勇者のくせになまいきだ』シリーズは、ぼくの不満にある程度応えてくれた。魔王軍も初めは資源が乏しく雑魚しか戦いに出せないが、勇者とともに魔王も強くなっていく。これが、このゲームが出してくれた解答だ。悪くないアイディアだと思うが、それでも魔王軍軍師のぼくとしては納得のできない部分がいくつもある。
 ゲームによっては、オープニングで街や城が魔王軍によって滅ぼされる。あれだけの兵力をなぜ勇者一個人に向けないのだ。仲間を集めようと酒場へ向かう勇者を店に裏にでも引きずり込んで叩けばそこで戦は終わる。パンツを被った筋肉バカが4人もいれば何の被害もなく魔王軍は完勝できるのに。
 また、メタルスライムのような勇者が急速に育つモンスターを作る理由も分からないし、勇者一行が魔王の本拠地に近づいてきても彼らの糧にしかならないような雑魚をけしかけるのも愚行だ。かの大魔王様は仰っていた。「すべての戦いが勇者を育てる」と。序盤に雑魚を大量にけしかけての人海戦術に失敗したら、もうモンスターのランクは上げなくていい。ひたすらにスライムをけしかけ、倒せども一向にレベルの上がらないという不毛さを勇者に味あわせて心理面で勝利するのが得策だ。
 なのにどうして魔王の皆様は、「悪逆非道」とか「残酷無比」とか言いながら正々堂々と勇者に戦いを挑んでしまうのだろうか?なにか別の目的でもあるのだろうか?
 もしかしたらあるのかもしれない。ぼくが考えた説はこうだ。

 手塩にかけて育てた勇者に討たれるのが、魔王のステータス。

 こう考えればすべてを説明できる。魔王は、自らを討つ勇者を効率よく育てるために入念な作戦を練っているに違いない。初めは弱い敵と戦わせ基本を学ばせ、飽きない程度の数をこなしたらステップアップ。徐々に敵を強くして勇者に自信を与える。勇者のモチベーションが落ちてきたら、仲間や親・恋人を殺して絶望しない程度にやる気を回復させる。先代勇者や英雄を生かしておいて必殺技を学ばせる。武器防具に箔を付けるためにダンジョンの奥に隠す。
 ありとあらゆる演出を施し他魔界の魔王がうらやむほどの究極最強勇者を育て、それに討たれる。これぞ魔王の生き様。そう、情けは勇者のためならずなのだ。