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銭形

by 唐草 [2012/03/10]



 最近銭形の良さが分かってきた気がする。銭形って言っても小銭を投げるという効果の薄そうな投擲攻撃で知られる元祖銭形平次ではない。もちろん今日の主役は『ルパン三世』でお馴染みの銭形警部だ。
 昔からぼくは、ルパン三世と言えば次元大介こそ最高のキャラクターだと思ってきた。俗っぽい物を好むルパンに対して、クールで物静かな性格がかっこよく見えた。最高の射撃の腕を持っているが、それを自慢気に語ることもない。ただ黙って撃ってその実力を示すだけだ。だからといって、ただクールなだけじゃない。絶対にルパンを裏切らないし、苦楽を黙って共有する義理堅い面もある。それらが同居したあの黒スーツ姿がかっこよく見えたんだ。
 それに比べて主にアニメの銭形(第2シリーズ以降)と来たら完全に道化役。逮捕にはことごとく失敗するし、ルパン一味の罠にもはまる。まるでいいとこなし。強いて言えば、ルパンの有能さを示す噛ませ犬でしかない。そんな風に思っていた。
 今でも基本的には、このように考えている。でも、次第に銭形の良さが分かってきた。
 原作とアニメの第1シリーズでは、銭形は次元以上にクールいや冷徹と呼ぶべき有能な刑事として描かれている。もちろん、その設定の方がかっこいいが、道化役であることを踏まえても銭形こそがルパン三世シリーズ最高のキャラクターだと思えてきた。
 ルパン逮捕だけを考えて一切ぶれない人物設定というてんが評価されがちだが、ぼくはそこを重要視していない。ぼくが重要だと思っているのは、ルパン一味というチートしていると言って過言ではない有能なスーパースターチームの対となるキャラクターを一人でこなせる人物造形の深さだ。物語のなかに光り輝く主人公が一人いただけでは、その明るさがどの程度の物か知ることはできない。明るさを知るには、その光を受け影を作るものが必要だ。その影を作る役を銭形は、時にコミカルに、時にシリアスに引き受けている。
 ライバルを止める(ルパンの場合は逮捕)というシンプルな動機しか持たないにもかかわらず、変幻自在なポジションから主人公の輝きを伝える役回りを引き受けられる深みのある人物造形。これこそ銭形の良さだ。
 たぶん、ルパン無しのルパンは成り立つが、銭形無しのルパンは成り立たないと思う。あのトレンチコートはただ者じゃない。