カレンダー

2012/07
25262728
293031    
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

戻ってきた封筒

by 唐草 [2012/07/20]



 新聞を解約して以来、まさに郵便受けとしてだけ働くようになった我が家のポスト。仕事の純度こそ上がったかもしれないが、活躍する機会は減る一方。あのポストの口を揺らすのは、横柄な態度の郵便局員ではなく、ネズミのように走り回るポスティング会社のしがないバイト君だけである。
 そんなポストに1通の茶封筒が入っていた。
 どこにでも売っているような50枚で200円程度といった安さがにじみ出ている貧相な茶封筒。季節外れの冷たい雨の湿気に負けてよれよれになっている封筒は、貧相さをより増していた。
 封筒を手に取った。なんだか、この封筒、凄く見たことがある。今までに受け取ったり、送り出した封筒の中でも一番見覚えがある。
 それもそのはず、この湿気に負けた貧相な封筒は昨日ぼくがポストに投函したものだ。中には請求書が入っている。なんで、戻ってきているんだよ…。
 しっかり確認するまでもなく、封筒にはあやしいラベルが貼られている。なになに?戻ってきた理由は、80円の料金不足だって?どうして請求書一枚が80円で送れないんだ!ん?80円の料金不足ってどういうこと?
 中身を透視できるぐらいの集中力で封筒を確認する。
 あるべきものが無かった。貼ったはずの切手が、綺麗サッパリ消えていた。
 断じて言おう、切手を貼り忘れたわけではない。80円切手を貼ったことはちゃんと覚えている。切手の裏を舐めるかを迷って結局濡れタオルを利用したぼくの姿の目撃証言もあった。ポストに投函した後に、予期せぬ事態に巻き込まれ切手が剥がれてしまったのだろう。
 悔しい。実に悔しい。きっと誰かの手紙に貼り付いてしまっているであろう切手のことを考えると、80円を失っただけとは思えないほど悔しい。