by 唐草 [2015/05/01]
5月の眩しい光に照らされた自室のフローリング床は、うららかな日射しとは対照的にみすぼらしいものだった。
そりゃそうだ、もう何年もワックスがけなんてしていないんだから。
ワックスがけをしようと思って、ワックスを準備したかすかな記憶がある。何年も前のことなので細かいことは思い出せない。でも、買ったままで止まっている。今日は疲れているから明日ワックスをかけよう。今日は天気が悪いから今度の休みにワックスをかけよう。冬は寒いから春になったらワックスをかけよう。そんなことを言っている内に、本気を出すべき明日は永遠に来なかった。
床のみすぼらしさを目のあたりにしたのは、幸か不幸か暖かい季節で天気も良く一足早く連休に突入した初日。ワックスがけをサボってきたすべての理由に合致しない究極のワックスがけ日和とでも言うべき日だった。
今日を逃したら、本当に永遠にワックスをかける日は訪れないかもしれない。ついに本気を出す日が来たようだ。
だが、ぼくのサボり癖は、1年に1度あるかないかのベストな日よりだからといって易々と仕事を受け入れるほど甘いものではない。重箱の隅を突くように新たな理由を見つけてワックスがけを明日へと延期しようと試みる。
ぼくのサボり癖が見つけた今日の口実は、ワックがけに使用するスポンジが無いということだ。ワックスのボトルには「スポンジにワックスを含ませ塗り広げましょう」と書かれている。
うん、スポンジが無い今、ワックスを塗るのは不可能だ。よし、サボろう。
と思ったのだが、それを思い留めるほどに床板はみすぼらしかった。
スポンジが無いならハケを使えば良いじゃない。
ぼくの中に残されたわずかな良心が、提案をしてくる。一般家庭において、スポンジが余っている可能性とハケが余っている可能性のどちらが高いだろうか?そんなことを調べた統計なんかは存在しないだろうが、我が家にはなぜかハケが余っている。
紙コップにワックスを出して、幅4cmぐらいのハケでワックスを塗っていく。
なにこれ、楽しい。ハケ目が出ないようにフラットに絵の具を塗る感覚にそっくりだ。ハケで塗ることを楽しんでいる内にワックスがけは完了した。
だが、なんだか物足りない。もっとハケを使っていろいろな物にワックスを塗りたくりたい。そんな妙な感覚に囚われている。