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自分を蹴る

by 唐草 [2016/08/02]



 夏は、下駄で生活をしている。ぼくの下駄歴は結構長い。下駄とは、もう10年来の付き合いだ。履き始めた頃のようにツルツルとしたスーパーマーケットの床で転けそうになることも無くなったし、鼻緒ですれて赤むけになることも減った。アスファルトの上を移動しているので走る事は出来ないが、早足で歩くことぐらいはできるようになっている。ほぼ普通のサンダルと同じように下駄を履きこなすことができる。
 そんな自信があったのに、今日は自分の足を下駄で思いっきり蹴ってしまった。それも、くるぶしを蹴り上げてしまった。硬い下駄での一撃は強烈な打撃だ。あまりの痛みに思わず声を上げてしまっていたかもしれない。うずくまることはなかったが、骨へのダメージを本気で心配してしまうほどの痛みだった。
 幸いなことに骨への異常はなかったようだ。大きなアザはできていたけれど…。
 なぜ、はき慣れた下駄で自分を蹴ってしまったのか?今回は、思い当たる節がある。
 暑かったので麻のユルッユルのズボンをはいていた。パジャマかと問われても否定できないような7分丈のズボンだ。その緩いズボンの右ポケットに重い財布を入れていた。財布の重みで一歩ごとにズボンがずり落ちていくような感覚に囚われていた。いや、事実少しずつ下がっていた。
 下がるズボンを食い止めるため、知らず知らずのうちに右の腰を高く上げるような妙な姿勢で歩くことになってしまった。自分でも体幹がずれていると感じていた。
 その矢先のキックである。
 財布に意識を取られるあまり、体の軸がずれまくっていたのだろう。捻れた体からまっすぐに振り下ろされた下駄は、反対の足へと直進して痛恨の一撃を放つこととなった。体のバランスって繊細なんだなぁと痛みに耐えながら、文字通り痛感した。