by 唐草 [2012/04/24]
物騒な夢を見た。
氷の刃を使った殺人の話はよく聞く。実際に氷の刃のトリックを使った作品を読んだことはないけれど、お手軽完全犯罪としてもてはやされている感じがする。夢の中でぼくが読んでいたミステリー小説にも似たようなトリックが出てきた。
でも、ただの氷じゃない。人毛と思える長い黒髪を束ねて作った巨大な筆のようなものを準備して水を含ませる。それを凍らせ鋭利な凶器として使っていた。そんな殺人のシーンを読めば、腹の傷口から大量の毛が生えている地獄絵図のようなものを想像するだろう。目覚めているぼくなら。
でも、寝ているぼくは違った。妙に冷静にDNA鑑定が簡単にできそうだなぁと考えていた。しかもその後すぐに思い直し、犯人自身の毛髪で作った凶器とは限らないと推理を進めていた。
転がる死体には目もくれず物的証拠から推理を組み立てていこうとするのは、ミステリー好きの性なのだろうか?
こんな物騒な夢を見たというのに、悪夢を見た時のような体のこわばりを感じることなく気持ちよく目覚めた。目覚めた後、改めて見た夢の内容を反芻してようやく、ひょっとしてアレは物騒な夢だったのではないかと思い始めたし、そんな殺人が行われた現場の様子を想像して起き抜け早々に滅入った気分になってしまった。
この夢はミステリーではない、ホラーだ。
とはいうものの、夢の中のぼくが興味を示していたのはその特異な凶器だけで、哀れな死体についての情報はいっさいなかった。まるで、現場写真を見るような客観的な気分だった。
読む小説も見るドラマもミステリーばかり。それも、犯人へ至る道が理屈っぽい方がより好きなぼく。お涙頂戴の動機なんてクソ喰らえ。今日のような物騒な夢を見てもワクワクしてしまうのは、危険な兆候なのだろうか?イヤそれはない、謎のない死体なんて見たくもない。すべてを知っている犯人サイドに興味はない。推理する側ではなくされる側にまわるなんてまっぴらごめんだ。無論、死体役も勘弁。