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椅子に座ったのは

by 唐草 [2014/03/12]



 電車の中で不自然に席が空いている場所があった。
 不自然に席が空いている場合、考えられる理由はそう多くない。まずは、ゲロなんかで座席が汚れている場合。もう一つは、泥酔した人が隣に座っていて面倒そうな場合。あとは、ホームレス風の耐え難い悪臭をまき散らす人がいる場合。この3つが、三大空席理由だろう。
 空いているのは、ぼくの向かいの席。ここからは、空席の原因がよく見える。
 向かいに座ってられるということからも、小さな理由で席が埋まっていないということが推測できるであろう。
 以前、ホームレス風の人が体臭をまき散らしながら乗り込んできて座席に座ったときは、ある意味壮観だった。蜘蛛の子散らすとはこういう光景を指すのだと言うのを見た。匂いの拡散とともに周囲から人が消えていった。無論ぼくも隣の車両まで逃げていった。
 ぼくの前の座席が空いているのは、座席の上にちょっとした物が置かれていたから。
 この季節よく目にするアレ。
 マスクだ。
 どういう訳だか、マスクだけが座席に置かれている。花粉に強そうな立体マスクだ。
 マスクの持ち主は、なぜ車内でマスクを外したのだろうか?そして、花粉まみれの屋外で無事なのだろうか?様々な疑問が浮かぶ。
 マスクという物は、ゲロなんかに比べればたわいのない物だ。でも、口に密着する物だしあまり触りたくはない。また、どかしたマスクの処分にも困る。そういう衛生観念と倫理観が、座席から人を遠のけているのだろう。
 ところが、ひとりの男性が何の躊躇もマスクの置かれた無く座席に座った。
 もちろんマスクの上に座ったわけではない。平然とマスクをつまみ上げるとそれを座席の下に放り投げた。なんと大胆な。
 どんな人かと思ってチラッと見たら、明らかにヨーロッパ系の人。
 あぁ、基本的な価値観の相違というのを見たような気がした。