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最後の観梅

by 唐草 [2014/03/24]



 青梅の梅郷に梅を見に行ってきた。
 何年かに一度行っているおなじみの場所だが、今年はちょっと感慨深い。ある意味、今年が見納めだからだ。
 数年前から指摘されていたのだが、青梅の梅はウイルスに感染してしまっていたらし。人体への影響とかは無いようだが、植物への悪影響はあるらしい。懸命な治療が行われていたようだが、それでも感染の勢いには追いつかず、ついには青梅の梅をすべて切り倒さなくてはならないという事態に陥ってしまったそうだ。
 伐採は、今年の4月から始まるらしい。そう言うわけで、この春が梅の見納めという訳だ。
 この一連の決定を聞いて思ったのが、『風の谷のナウシカ』の腐海。自然の感染力の前では人の力などでは到底太刀打ちできない。最後は、泣く泣く木を切り倒すという悲しい物語だ。
 さて、実際に梅を見てきたところ、例年と変わらないように咲いているようにも見えた。寒さと大雪の影響で開花時期が遅れたような印象はあるが、どの木も小さな花をつけ、梅の公園は慣用句通り霞がかかったような淡い色に包まれていた。
 素人目には何の異常もない木を切り倒さないといけないというのは、なんとももったいなく感じられる。
 とは言え、観光を取るか農業を取るかとか、今年の利益だけを考えるのか向こう十年の利益を考えるのかといった難しい判断の末の結論だったのだろう。
 この梅の公園は、今では観梅の名所として知られているが、20年ぐらい前までは別の観光スポットだった。やはり、梅をベースにした観光なのだが、焦点を当てていたのは花ではなく実の方。ぼくがこの公園に初めて足を運んだのは、梅の実狩りだった。小学生の軽さを活かして木に登り梅の実を袋一杯に収穫した記憶もある。それと同時に木登りなんてしたことのないぼくは、登ったものの降りられなくなって、勢いで電柱に登ってしまった猫のように樹上で四苦八苦した記憶もある。
 そう言えば、梅の実狩りもいつの間にか終わっていた。取りすぎて木がダメになったというような噂を耳にしたこともあるが、真相は知らない。
 20年ぐらいにわたって見たり触ったりしていた木々が一掃されるかと思うと少しもの悲しいものがある。何年後かに復活する日が来ることを楽しみにしてよう。