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学習できないリモコン

by 唐草 [2022/12/25]



 10月下旬に部屋の照明をLEDに変えた。新しい照明にはリモコンが付いていた。せっかくリモコンが付いているのだから部屋の隅にある壁スイッチを操作するのはもう止めて、これからはリモコンで操作しよう。
 そう思ったが、ぼくの固くなった頭は生活習慣のアップデートを拒んだ。
 リモコンが目の前にあっても電気を消そうと思うとリモコンに手をのばすよりも先に部屋の隅まで歩いていた。20年来体に染み付いた習慣を書き換えるのは無理だった。
 小さなリモコンひとつの話かもしれないが、ぼくは変化を易々と受け入れられなくなってしまった自分に心底落胆した。もうぼくの脳ミソはセメントのように固くなって、古い枯れ枝にしがみついているだけだと痛感した。
 そして悲しいことに、これだけ痛感してもなお生活を変えることができなかった。そして、また落ち込むのだった。
 こうして気がつけば真新しい乾電池を入れたリモコンは、所在なげに部屋の片隅に追いやられていった。それは世間の変化に置き去りにされた自分自身の後ろ姿にも重なった。
 そんな凝り固まったぼくの元に最後のチャンスが舞い降りてきた。
 先日、倉庫番ゲームのように自室を模様替えした結果、壁スイッチが押しにくくなってしまった。本棚の隙間へ手を差し込まないとスイッチに指が届かない。
 暖房効率が良くてもこれでは不便だ。
 と言うわけで、再びリモコンに脚光が当たることになった。
 物理的にスイッチが押しにくくなったのだから、今度こそリモコンを活用できるようになるだろう。そして、これまでの反省を活かしてリモコン置き場を固定することもした。もはやリモコンとは名ばかり。新たな壁スイッチみたいになってしまった。
 ここまですれば新たな操作を自然に受け入れられるはず。壁スイッチを探して本棚の隙間に手を伸ばすなんて愚行はしないだろう。
 そう期待していたのに、暗がりで本棚を殴る毎日が続いている。
 だから、その隙間に手は入らないんだって。石化した脳は何も学ばない。拳の痛みでリモコンの存在を思い出すなんて悲しい毎日はイヤだ。