カレンダー

2012/06
     
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

ボロ校舎見納め

by 唐草 [2012/06/02]



 先日、高校の同窓会から一通のハガキが届いた。なんでも、老朽化の進む高校棟の立て替えが決まったので6月の文化祭が校舎の見納めになるとのことらしい。それにあわせてホームカミングデーを開くのでよろしければ参加してくださいとの連絡だった。
 クラスの同窓会の誘いに返事すらしないぼくが、卒業年度をまたいだ交流会に出るはずなどがない。でも、あのボロ校舎も見納めかと思うと少し寂しいものがある。ホームカミングデーは完全に無視して、文化祭をのぞきに行くことにした。
 卒業後文化祭へ初めて行ったときは文化祭のクオリティーが著しく下がったように感じた。自分たちはもっとうまくやっていたはずだ。今年の高2はダメなのか?と不安になったものだ。でも、それは知らず知らずのうちに自分のレベルが上がっていたためだったらしい。大学生の目からすれば高校生の作るイベントなんてちゃちなものに見えるのは当然なこと。最近では、このチープさこそが文化祭の醍醐味だと楽しめるようにさえなってきた。
 帰宅部のエースだったぼくには、後輩の様子を見にあのクラブの展示や催し物を覗いてみようなどと考えることはない。それでも数年に一度は文化祭へ足を運んでいるのは、文化祭委員を全うしたという自負があるからだろう。出し物には興味がないが、運営委員として学校を走り回っているはっぴ姿(伝統的に運営委員ははっぴを着ることになっている)の委員を見ているのが一番楽しい。ぼくも文化祭の時に走り回っていたものだ。
 さて、肝心の校舎はどうだろう?薄暗い廊下。度重なる塗り直しを感じさせる厚塗りの壁面。すり切れた階段。へこんだロッカー。なにもかもが、ぼくが在学していたときと同じようにボロい。
 おぼろげな記憶を頼りに在籍していた教室へと向かってみた。教室ではどこかのクラブが出し物をしていたのでいつもの風景はそこにはなかった。でも、渡り廊下から見下ろす景色は、あの時と変わらないように思えた。10年経っても同じ場所に置かれている黒板消しクリーナーを見て、妙に懐かしい気分になってしまった。