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家電売り場にて

by 唐草 [2012/06/30]



 6月の上旬ぐらいに炊飯器が壊れてしまった。以来、土鍋でお米を炊く伝統的な炊飯方法を採用していた。一切電気を使わない炊飯方法なので、電力が逼迫する夏にはもってこいな節電エコ炊飯だろう。
 ただし、やっかいな点もある。ご飯を炊いている間、土鍋の前から離れられないという致命的な問題を抱えている。スイッチ1つ押すだけで、後はなにも考えなくてよい電気炊飯器とは雲泥の差だ。
 当初は目新しさと炊きあがりの質の良さで土鍋炊飯を続けようかとも考えたが、次第に面倒さが上回ってきてしまった。美味しくお米が炊けるが、調理の手間と後片付けの面倒さに屈してしまった。
 という訳で、家電量販店へ電気炊飯器を買いにむかった。
 炊飯器の値段というのはよく分からない。10万円オーバーの機械から1万円以下のモデルまで様々だ。各モデルに様々なスペックが記載されている。
 「圧力炊き」「真空熟成」「石窯」「高温沸騰」などなどあまり目にする機会のないような言葉が並んでいる。どの機構が、炊飯に対してどのような効果をもたらすのかサッパリ分からない。
 ぼくが理解できたのは、消費電力(W)と炊飯量(号)だけ。それ以外のスペックは、皆目理解できなかった。よく分からない機能を説明する言葉に囲まれて、霧に包まれた異世界へと足を踏み入れたような気分にさえなってしまった。
 理解できない言葉の霧に包まれている体験。これって、もしかして多くの人がパソコン売り場で体験している困惑ではないのだろうか?
 PCオタクのぼくは、店員を言葉に詰まらせられるぐらいPCの知識を無駄に持っている。CPUの名前から世代名、マザーボード、メモリなど規格、各種数値の意味をそれなりに理解しているつもりだ。でも、みんながみんなこんな訳じゃない。もし、誰もがこれぐらいの知識量を持っていたら、PC売り場はあんな困惑に満ちた顔であふれているはずがない。
 そうかPC売り場で、外国人に道を尋ねられたような顔をしている人々は、炊飯器のスペック表示に首をかしげる今のぼくのような気分だったのか。初めて理解できた。