by 唐草 [2012/06/11]
電車に乗っているときは退屈だ。音楽でも聴こうと鞄からPS Vitaを取り出し、シャツの胸ポケットからイヤホンを取り出した。
その時、妙な違和感に襲われた。
なんで出かける直前に着替えたシャツの胸ポケットにイヤホンが入っているのだろうか?確かにぼくは、胸ポケットにイヤホンをしまうことが多い。でも、今日はまだ一度もイヤホンに触れていないはずだ。
では、なんでここにイヤホンが入っているのだろうか。そういえば、1週間ぐらいイヤホンを使っていなかったような気がする。なんだかすごくイヤな予感がするぞ。
考えられる理由は1つしかない。イヤホンを胸ポケットにしまったまま洗濯してしまったとしか考えられない。そしてそのまま干されて、気持ちよく乾かされてタンスの中へしまわれ1週間。
なんてこった。イヤホンを洗濯機で洗ってしまったのか。イヤホンにとって拷問に近い扱いだな。オーディオマニアが聞いたら卒倒しそうな状況だ。
正直言ってイヤホンが無事だとは思えない。仮に音が出たとしても、内部の部品が錆びたりして音質が落ちている可能性もある。ちょっと前に買ったばかりなのでかなり悔しいミスを犯してしまった。
ぼくは覚悟を決め、ため息混じりにイヤホンをつないで音楽を再生する。いったいどんな音が再生されるのだろうか。
耳を疑うとはまさにこのことだ。
耳に収まった小さなイヤホンからは、いつも通りの音楽が流れている。音割れもないし、低音も高音もちゃんと出ているように聞こえる。オーケストラ演奏のクラシックを聞いたら問題は見つかるかもしれないが、電子音に満ちたエレクトロニカを聞く分には遜色ないようだ。
イヤホンは洗濯機から軌跡の生還を果たしたのだ。発電所ごとの音色を聞き分けるオーディオマニアのマネをして、洗ったイヤホンは湿った音になったと嘘を付いておこう。