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黄色い汚れの正体

by 唐草 [2022/03/08]



 指先の傷を保護するために2週間近く青いニトリル手袋を着用し続けている。使い捨ての薄いゴム手袋なので、汚れが目立ったり、伸びて緩くなるたたびにドンドン交換して使ってきた。
 手袋をしていて不思議なのは、いつも黄色く汚れることだった。まるでカレー粉でも触ったような感じになる。当然、カレー粉なんて触っていない。身の回りに黄色いものなんて無いし、同じ色の汚れを見たこともないのに手袋だけが黄色くなる。いったいこの黄色い汚れの正体はなんなんだろう?
 黄色い汚れが目につくたびに手袋を様々な角度から何度も観察して、ついに黄色の正体を見極めることができた。ゴム手袋なので、汚れた部分を伸ばせたのが観察を助けてくれた。
 結論から言えば、汚れの正体は不明。それでも1つ確かなことがある。黄色い汚れは黄色ではないということ。意味不明に聞こえるかもしれないが、これが間違いのない最終的な結論だ。
 汚れたところだけを観察してみると全然黄色くない。むしろ手袋本来の青さを感じる。ところが、手袋全体で見ると汚れたところだけが黄色く見える。これ、色の錯視で黄色く見えているだけ。手袋本来の鮮やかな青に比べると、すんだグレーに汚れた部分が相対的に黄色く見えているに過ぎない。体の静脈が緑色っぽく見えるのと同じ理屈だ。
 黄色い汚れなんて初めから存在していなかった。ぼくの脳が勝手に見ていた幻でしかなかった。
 昔、明るい色の家具には黒い埃が積もり、逆に暗い色の家具には白い埃が積もることを不思議に感じたことがあった。同じ部屋なのになぜ汚れ方が違うのかと首をひねった。当時のぼくが下した結論は、部屋には様々な色の埃が飛んでいるが明るい色の埃は暗い家具の上でしか見えず、暗い色の埃は明るい家具の上でしか見えないというものだった。
 これは間違いだった。積もる埃の色も錯視。同じ埃が積もっても、明るいもの上なら暗く見える。その逆もまた真なりというのが正解。
 色は組み合わせでしか認識できないと知っていても、目の前の光景にコロッと騙されてしまう。人間の目なんていい加減なものだ。